MPPCreatorは、個別受注生産、多品種少量生産のお客様のためのPDMシステムです。

量産品においても、素材(材料)の購入から製品出荷までの製作・検査プロセスを管理するためにご利用いただけます。

MPPCreator は、Multi-Purpose Process Creator の頭文字で、文字通りいろいろな目的で使える、製作・検査プロセスを検討するシステムを目標として開発しました。

MPPCreatorの開発にあたって、5つの目標がありました

  1. 見積時の初期検討~製作記録までを一気通貫で管理できること。
  2. 素材から製品出荷状態までの製作・検査プロセスを一気通貫で管理できること。
  3. 設計変更の対象箇所を製作・検査プロセスに対して伝搬できること。
  4. 検討した製作・検査プロセスをそのまま製作指示書として発行できること。
  5. 製作指示書と同様の内容をスケジューラに連携できること。

MPPCreatorでは、M-BOMだけでは表現に限界があったプロセス情報を、精緻に表現できるようになりました。

従来のM-BOMによる表現の限界

この図は、非常に単純な製品構成をもつ「圧力容器」です。[M-BOM構成例2]には、「下部+中間胴」(赤線部)が追加されています。

下部胴と中間胴を明示的に先に合わせることをM-BOMとして指示していて、これは組立順をどこまで表現するかを示した一例になります。

では、加工順やプレス加工などの回数などはどのように表現するのでしょうか?

[M-BOM構成例:加工プロセス]は、素材が納品されてから、曲げ加工して2枚板を合わせて単体胴を製作するイメージのM-BOM部品です。たしかに表現はできますが、加工回数分のM-BOM部品階層を作成することになります。

切断プロセスはどうでしょうか? 一般的に、部品構成数に小数点を設定したり、重量、長さなどを設定して対応する事が多いと思われます。図の[M-BOM構成例:切断プロセス]では、部品構成数に[0.20]を設定しています。

従来のM-BOMに対応したPDMシステムでも、ひと通りのプロセスの種類(組立、加工、切断)をすべて表す事はできます。しかし、製作プロセスの見直しのたび、M-BOM構成を変更しなければなりませんでした。

プロセスを主軸としたMPPCの柔軟な表現力

部分組立工程の表現方法

[部分組立部品あり]は、上で例示した、「下部+中間胴」を作成した上でプロセスを表現したものです。

「下部+中間胴」の必要性が感じられない場合、[部分組立部品なし]のように、プロセスをひとつ上の階層の部品で表現できます。このように、プロセスを主軸で考えることで、M-BOM 部品の基本単位を柔軟にすることができます。

一般的には、以下の単位で M-BOM 部品が定義されます。

  1. 工程に投入される部品
  2. 工程で生産される製品
  3. 標準作業時間/リードタイムの算出ポイント
  4. 品質管理ポイント
  5. 設備&工場などのリソース
    ※移動&搬送する部品

MPPCreatorなら、設計変更を漏れなく製作・検査プロセスに反映でき、各社の状況に応じて必要な粒度でM-BOM 部品を定義できます。M-BOM部品は、SAPなどの生産管理システム、スケジューラなどに、工数情報やコスト情報をデータ連携するために利用できます。

特殊な工順の表現

非常に特殊なケースをご紹介します。

「下部鏡+下部胴+中間胴」の組立部品行に定義されていた、「圧力計用管台」の合せのプロセスを「中間胴」の部品行に移動しました。

工順としては、「下部胴」と「中間胴」の合せ後に「圧力計用管台」を合わせているのは変わりません。

このような柔軟な表現により、以下の要件を満足する事ができます。

  1. 仮合せ後の加工プロセス
  2. 加工対象部品の指定
  3. 加工コストを計上する対象部品の指定

少し視点を変えて、仮に、「下部+中間胴」を表す組立(要領)図を出図しており、E-BOM部品として定義していたとします。

組立図に合わせてM-BOM部品を作成することで、E-BOMが変更された際のチェックポイントにすることができます。

MPPCreatorでは、黄色の部品アイコンがE-BOM部品、オレンジ色の部品アイコンがM-BOM部品を表しています。

一般的には、一定以上の大きさや複雑さの部品になると、組立(要領)図に類する図面や指示書が作成されます。通常、これらの図面や指示書は、設計変更連絡書のようなもので設計変更箇所が通知され、それを担当者の判断で工程に反映していましたが、MPPCreatorでは、M-BOMを介して設計変更箇所を現場が必要とする工程情報につなぐことが可能になります。

一般的なE-BOMでは、「部品番号」+「リビジョン」+「設計変更番号」という切り口で部品の仕様を管理しています。

それに対して、MPPCreator上でのM-BOMは、「部品番号」+「リビジョン」+「製造型式」という切り口で部品の製造方法を管理します。ここで、M-BOM側での「リビジョン」は、E-BOM の「リビジョン」と一致させる運用も、個別に採番する運用も可能です。

また、「製造型式」(図中では Type で表現)を利用して、当該部品の製造工場やメーカー違いなどの製造仕様を識別します。

各「製造型式」違いの部品仕様として、メーカー型番を登録したり、メーカー図面や原価を管理することができます。「製造型式」が異なる部品は、属性も工順も個別に設定することが可能になります。

内部的には、M-BOM部品側から対応するE-BOMの「部品番号」+「リビジョン」+「設計変更番号」を管理するイメージとなります。

図中では、[部品2]が「製造型式」違いの部品を表していますが、その直接の親製品[製品A]は同じ部品として識別されています。これは、M-BOM上で「製造型式」が異なっていても、完成した部品(対応するE-BOM)が同じであることを表しています。

これにより、1つのE-BOM部品に対して、異なる製造方法をもつ複数のM-BOM部品が管理でき、E-BOMの設計変更に関連するM-BOMを識別可能となります。

生産用BOMのリリース

MPPCreatorでは、選択された部品とその下位構成部品を対象にリリース処理を行います。

[製品A]を対象とした場合、[部品1]と[部品2]もリリース対象となります。この時、[部品2]は「製造型式」違いの[Type.A]と[Type.B]の部品がありましたが、これら2種類の部品も含めてリリース対象となります。

これに対して、[部品2]の[Type.A]を選択してリリースした場合には、[部品2]の[Type.B]はリリース対象となりません。リリースする場合は、個別に選択してリリース処理を行います。「製造型式」違いの部品は、個別の部品として識別されます。

設計部門において、仕様の見直し、品質改善、コストダウンのため設計変更が発生した場合、M-BOMや工程情報も同期して修正する必要があります。

設計変更通知には適用日や、「在庫がなくなったら適用」といった適用条件が明記されていることもあります。誤記修正や原価の見直し、まったく同じ部品だが取引先メーカーが異なる場合など、生産準備業務に影響がない設計変更も存在します。

一方で、生産技術部門では、どの時点でのE-BOMを受け取り生産準備を開始するかは業種業態により様々です。初版がリリースされる前から検討を開始しなければ、納期に間に合わない業種業態もあり、その場合、E-BOMがリリース(承認&確定)されているかどうかにかかわらず、それ以降の設計進捗分を生産準備検討結果に反映する必要があります。

また、その部品の生産工場、設備、規制、資格など様々な要因で工程情報を各々変更しなければなりません。もちろん、ひとつの部品を同時に複数の製造ラインで製作することもあります。

ここでひとつの課題がでてきます。生産技術部門の担当が検討の基にするE-BOM情報はどのように管理できるのでしょうか?

E-BOMの変更をM-BOM/BOPに伝達

MPPCreatorでは、図のようなロジックで設計進捗を反映していきます。

左から、[最新状態のE-BOM] [M-BOM検討に利用したタイミングでのE-BOM] [現在のM-BOM]の状態を表します。

生産技術担当がM-BOMを検討しはじめたタイミングで、その時点でのE-BOMのスナップショットが保持されます。その後、設計進捗と共に変更される最新のE-BOMと、M-BOM検討時のE-BOMスナップショットを比較することで何が変更されたかを差分検知できます。

これにより、E-BOMリリース前からM-BOMを検討していたとしても、その後の設計進捗を検知することができます。差分が発生した部品は、差分リスト画面上で部品を選択することにより、検討中のM-BOMにジャンプする事ができます。

初期状態では、[最新状態のE-BOM] [M-BOM検討に利用したタイミングでのE-BOM]が一致していますが、設計検討の過程でE-BOMは変更される可能性があります。

板材から製作するのか鍛造材を購入するのか、未確定の状態で製作・検査プロセスを検討していたと仮定します。M-BOMの検討の途中で、設計が素材部品をE-BOMに追加したとします。今回の例では、板材を2枚合わせて各胴を製作するよう指示があったことを表しています。これらの差分情報は、リスト状態で消込みの確認ができるようになっています。

設計との協業(コラボレーション)

このようにE-BOMとM-BOMの対応付けを行うことで、E-BOMがリリース前であっても生産準備の検討が行えるようになります。

図のように、プロセスは階層定義する事ができるようになっています。「概略」プロセスしか定義できない状態であれば「概略」プロセスを定義し、「詳細」プロセスが定義可能であれば、その部分だけを詳細化していくことが可能です。また、プロセスには装置などの資源の他、図面や指示書を関連付ける事ができます。

設計進捗状況を確認しつつ製作&検査プロセスの最終確認を行い、検討が完了したらM-BOMをリリースしていきます。

プロセス検討においては、部品単位にリリースを行う仕組みとなっているため、プロセスをリリースする単位に合わせてM-BOMの部分組立部品を定義することを想定しています。

部品やプロセスをリリースする事により、その時点での下位構成の情報や関連付けられていた図面&図書、プロセスなどが編集できなくなり、検討結果として確定した状態になります。もし、リリース済のM-BOM部品やそのプロセス情報を編集したい場合には、生産技術担当は

  1. 改訂する。(M-BOM部品のリビジョンをインクリメントする)
  2. 工程変更する。(「製造型式」を変更する)
  3. リリース取止めする。(「リリース」処理を取止めて状態を戻す)

のいずれかの処理を行う必要があります。

設計情報と製造関連システムの連携

ここまでの事柄を踏まえると、変更の発生要因が全く異なるために、E-BOMとM-BOMの「リビジョン番号」を完全に一致させるのは困難であるとお気付きになると思います。しかし、E-BOMとM-BOMの「リビジョン番号」を無理に統一する必要はありません。

E-BOMは既に既存システムが存在し、製造指示システムも既に稼働していて置き換えが難しいケースもあります。大事なのは、生産準備を開始した時点、完了した時点でのE-BOM(図面なども含む)のリビジョンが適切に対応付けられており、製作に用いられた図面と対応がとれることだと考えられます。

MPPCreatorを導入することで、従来のPDMシステムで課題となっている、設計情報と製造関連システムがシームレスにつながります。

  • 設計&開発課で作成したE-BOMから、製作手順に合わせてM-BOMを作成。
  • 各部品の製作・検査プロセスに対して、必要な図面や製作・検査指示書が関連づけ。
  • 作成した製作・検査プロセスを基にスケジューリングを行い、各部品(素材)や図面、製作・検査指示書が必要な時期が明確に。
  • 検討した製作・検査プロセスから製造指示を発行。